撥水セラミック塗装のこと 〜徳永順男が語る〜

杉を鉋で仕上げて家具や様々なインテリアに使おうとするには越えなければならない大きな問題があります。一つは杉をスカッと削れる鉋とその技術を持つ事。もう一つは柔らかい杉を汚れや傷から守る塗料を見つける事です。鉋の方は鍛冶師大原氏が様々な願いを形にしてくれています。塗料は頭の痛い、大きな問題でした。できれば天然由来の無害なもので、木の表情を殺さないオイル系のものが好ましいと思うのですが、オイルは例えばテーブルの天板に使った場合、輪染みになるなど決して強い塗料だとは言えません。
私もこれまで仕上げにはオスモオイルや自家製荏胡麻ワックス、漆などを使っていました。椅子など水に触れない家具にはオイルは適しているのですが、テーブルや床などはどうしても汚れが着き、シミになり、半年後には作った時の面影もないほどの味になってしまいます。
杉に適した塗料を求めて市販のシリコン塗料やガラス塗料を試していた頃、以前からの知り合いが、塗料のエキスパートが開発した特に浸透性とはっ水性に優れた新しい塗料の話を持ってきてくれました。この塗料は文化財の建築物やシャッターなどに塗って落書きができなくする目的で作られた今までに無いものだったのです。さっそく私はこのサンプルをもらい、杉に塗ってみました。粘性が低く、浸透性の高い透明な液体はどんどん染み込み、オイル仕上げのような使い方で、乾くと見た目はほとんど木そのものなのですが、水を通しません。主な成分は塗膜を形成するガラス質で、溶剤もアルコール系のものを使っており、食品安全基準をクリアーしています。
開発者の意図は、塗膜としての性能を重視した木以外の用途だったのですが、木に使用した場合、浸透して水分や汚れをシャットアウトし、表面は木の表情のままという、私たちにとってはまさに理想的な塗料と言っても過言ではありません。この性質を利用し、木に浸透させる塗料として、以後様々な特徴を持ったものが作り出されました。より浸透性が高く、乾くと木の硬度が増すタイプのもの。天然オイルと合わせ、欅などの硬い材質のものに対ししっとりとした艶を出せるタイプ。外部材用に紫外線防止効果のあるタイプのものなどです。
様々な用途に応じたサンプル試験では優れた特性を示した塗料なのですが、それでは実際日常生活に使ってみてどうなのだろうかと、これは自身、自宅で試した報告です。

松のテーブル

使い始めて15年になるのですが、オイル仕上げの表面はどうひいき目に見ても、“きれい”とは言い難いものでした。オイルは様々な汚れが付きやすく、固まっても塗膜は柔らかく、水や熱には弱いのです。電機鉋で表面を削り取り、手鉋で仕上げた後、tatara/撥水セラミック塗料を塗布し普段通りに使っています。
まず、手触りがサラサラで気持ち良く、油やしょうゆ汚れなどはしばらく置いてから拭いてもきれいに拭き取れ、跡が残りません。塗料がかかっている感じはほとんどなく、木の色は自然のままに、黄色から徐々に赤みが増してきています。

風呂のスノコ

私がこの塗料を試してみようと最初に思ったのが我が家の風呂のスノコでした。いつも湿った過酷な環境にある我がスノコですが、チークで作った初代は2カ月間変化がありませんでした。次の欅は1ヶ月と持ちませんでした。それこそあっというまにカビが生えてくるのです。黒い斑点が出来て来るとみるみる広がり、たわしでこすってもなかなか落ちません。杉は水を含みやすく、抗菌性にしてもヒバのように強力ではありません。そのままであれば、欅と同等またはそれ以下でありましょう。
今回作ったスノコは杉にたっぷりとこの塗料を染み込ませてみました。今1年4ヶ月なのですが、作った当初のままなのです。これはおそらく水が木材に入り込まない為、菌も侵入できないと考えられます。杉のにおいは保たれ、ドアを開けると杉の良い香りがします。今後風呂場の内装材としての使い道が広がるでしょう。

徳永家具工房のtatara / 撥水セラミック塗料

塗料の専門家に“木”の本質を知ってもらう事で生まれた塗料。何といっても私にとって一番の収穫は、杉が家具として、使える家具として自信を持ってデビューする決め手を得た事。そして今までのオイル仕上げの不安が解消した事です。
木に対する素晴らしい特性を備えたこの塗料は 出来て間のない新しいもので、様々な使い方があると思います。革や和紙に使うのも良いかもしれません。それを見つけ出す事は木に携わる者のこれからの課題として、多くの人々と共にかかわって行きたい魅力のある作業だと思っているのです。

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